
メールで届いた請求書は、印刷しておけばよいのでしょうか。紙のレシートは、スマホで撮ったら捨ててもよいのでしょうか。電子帳簿保存法への対応を考えるときは、まず「もともと紙だった書類」と「データでやり取りした書類」を分けると整理しやすくなります。
先に結論をお伝えすると、電子取引の請求書・領収書などはデータで保存します。一方、紙のレシートまで一律に電子化する義務はありません。電子化する範囲を広げる前に、電子取引データの保存場所とルールを整えましょう。
この記事では、2026年時点の国税庁資料をもとに、書類の分け方、保存する手順、確認項目を説明します。ファイル名やフォルダの例は当サイトの整理例で、その形だけで全ての法令要件を満たすという意味ではありません。
- まず紙・電子取引・帳簿の3種類を分ける
- 電子取引データの保存で確認する3つの要件
- 1. 訂正・削除を防ぐ方法を決める
- 2. 保存データを見て、出力できるようにする
- 3. 検索要件と、自分に適用される緩和条件を確認する
- 紙・PDF・メールを整理する5つの手順
- 1. 取引データが届く場所を書き出す
- 2. 添付ファイルとメール本文を分けて保存する
- 3. 保存場所とファイル名の付け方を決める
- 4. 保存したデータを開いて確認する
- 5. 月末に帳簿と書類の保存漏れを照合する
- 紙のレシートは、撮影しただけでは捨てない
- 保存期間は「電子だから一律○年」ではない
- 保存を続けるための月末チェックリスト
- 個人事業主の電子帳簿保存法でよくある質問
- 白色申告や免税事業者なら、電子保存しなくてもよいですか?
- 有料の会計ソフトを契約しなければ対応できませんか?
- 猶予措置があるなら、元データを残さなくてもよいですか?
- まとめ|電子取引の保存先と運用ルールから整えよう
まず紙・電子取引・帳簿の3種類を分ける
「電子帳簿保存法に対応する」といっても、対象によって制度が違います。受け取った書類を、次の表に当てはめてみてください。[1]
対象・受け取り方 | 基本となる扱い | 最初にすること |
メール添付PDF、Web領収書など | 電子取引データとして保存 | 取引情報を含むデータを確保する |
紙でもらった領収書・請求書 | 紙のまま保存できる | 原本を整理する。電子化するならスキャナ保存の要件を確認 |
会計ソフト等で作る帳簿・書類 | 電子帳簿等保存は別制度 | 帳簿の保存方法と要件を確認する |
電子取引データを印刷して仕事で使うことはできますが、その印刷物だけを保存して元データを消す方法とは分けて考えます。また、自分が相手へ送った請求書などの控えも保存対象になります。受信分だけでなく、送信分も確認しましょう。[2]
電子取引データの保存で確認する3つの要件
国税庁は、原則的な保存ルールとして、改ざん防止、確認・出力できる環境、検索機能を案内しています。専用ソフトを買うかどうかの前に、自分の保存方法でどこまで対応できるかを確認します。[2][3]
1. 訂正・削除を防ぐ方法を決める
タイムスタンプや訂正・削除の履歴が残るシステムなどのほか、改ざん防止の事務処理規程を作り、そのルールに沿って運用する方法があります。普通のフォルダに入れただけで、この要件まで満たせるわけではありません。[2]
ひとりで管理する方は、国税庁の「個人事業者の例」を確認すると始めやすくなります。規程をダウンロードして終えるのではなく、実際の保存先、管理する人、訂正や削除が必要なときの扱いを自分の仕事に合わせて整えましょう。[4]
2. 保存データを見て、出力できるようにする
必要なデータを画面で確認でき、求めに応じて出力できる環境を用意します。スマホ中心で取引をしていてPC・プリンタを持っていない場合も、近隣の有料プリンタ等で速やかに出力できれば扱いが認められると国税庁は案内しています。端末を持っているかだけでなく、実際にデータを開けるかを確かめましょう。[3]
3. 検索要件と、自分に適用される緩和条件を確認する
原則は日付・金額・取引先で検索できることに加え、範囲指定・組み合わせ検索などの要件があります。税務職員からのデータのダウンロードの求めに応じられる場合は、一部の検索機能が不要になります。[3]
さらに、基準期間(通常は2年前)の売上高が5,000万円以下などの条件を満たし、ダウンロードの求めに応じられる場合は、検索機能の確保が不要となります。2026年の取引なら、通常は2024年の売上高を確認します。これは検索要件の緩和であり、データ自体の保存や改ざん防止まで不要になるものではありません。[3]
条件に当てはまる方も、日付・取引先などをそろえておくと、帳簿と照合するときに探しやすくなります。ファイル名の統一は便利な整理方法ですが、全員に同じ命名方法が法律で指定されているわけではありません。
紙・PDF・メールを整理する5つの手順
紙の書類とレシートを整理するイメージ(写真AC)
1. 取引データが届く場所を書き出す
メール、通販サイト、クレジットカードの利用明細、月額サービスの管理画面など、事業の書類を受け取る場所を並べます。「請求書はメールだけ」と決めつけず、Webへログインして取得するものも含めて確認すると、保存漏れを見つけやすくなります。[3]
2. 添付ファイルとメール本文を分けて保存する
取引情報がPDFなどの添付ファイルだけに記載されているなら、その添付ファイルを保存します。メール本文に取引情報がある場合は、本文も保存対象です。挨拶だけのメールまで、電子帳簿保存法のために全件保存する必要があるわけではありません。[5]
まずは実際のメールを1通選び、日付・相手・金額などがどこに載っているか確認してみてください。件名やメールへのリンクを控えただけでなく、保存対象の情報を後から読める形で確保できているかを見るのがポイントです。
3. 保存場所とファイル名の付け方を決める
たとえば、事業用の保存先に「2026年」「電子取引」「受領」「送付」のフォルダを作り、毎回同じ場所へ入れる方法があります。ファイル名は、日付・取引先・金額に書類の種類を加えると、似たデータを見分けやすくなります。
整理する項目 | 説明用の入力例 | 運用でそろえること |
日付 | 20261015 | 受信日と取引日を混在させず、書類に応じた日付ルールを決める |
取引先 | あおばデザイン | 略称・正式名をばらばらにしない |
金額 | 33000 | 税込・税抜等の扱いを統一する |
種類・識別 | 請求書_受領_001 | 同日同額の別書類も区別できるようにする |
ファイル名の例:20261015_あおばデザイン_33000_請求書_受領_001.pdf
これは架空の取引を使った整理例です。国税庁も規則的なファイル名や索引簿を用いる方法を案内していますが、改ざん防止措置や、税務調査時のデータ提出への対応などと組み合わせて考える必要があります。命名だけで対応完了とは判断しないでください。[5]
4. 保存したデータを開いて確認する
保存直後に、ファイルが開くか、必要な情報が欠けていないかを確認します。Webでダウンロードしたつもりでも、案内画面だけを保存していることがあるため、請求書・領収書そのものになっているかを見ておきましょう。
Webサービス上で保存する場合は、法定の保存期間中、必要な要件を満たして確認できるかが大切です。一定の条件を満たすサイトでは必ずしもダウンロードが必要ではありませんが、退会や掲載期間の終了で見られなくなる場合は、その前にデータを保存する必要があります。[5]
5. 月末に帳簿と書類の保存漏れを照合する
月末など、自分が続けやすいタイミングで、帳簿にある取引と保存した書類を見比べます。データを保存する作業と、経費・売上を帳簿へ記録する作業は別です。「保存済み」「記帳済み」を分けて確認すると、どちらを終えたか分からなくなるのを防ぎやすくなります。
故障や誤削除に備え、別の場所にも復元できるデータを残しておくと安心です。バックアップは電子取引の法令上の要件そのものとは分けて、紛失対策として考えましょう。[5]
紙のレシートは、撮影しただけでは捨てない
紙で受け取った領収書や請求書を、紙に代えてデータで保存する場合は「スキャナ保存」のルールを確認します。単にスマホで写真を撮ることと、制度上の保存要件を満たすことは別です。[6]
書類に応じた入力期間、画像の読み取り条件、訂正・削除を確認できる仕組み、検索などの要件があります。電子取引の事務処理規程を作っただけで、紙書類のスキャナ保存まで同じ方法で済むわけではありません。[6]
紙を減らしたい方は、使うサービスがスキャナ保存にどう対応するか、必要な設定・保存後の確認は何かを先に確かめましょう。確認できるまでは原本を保管しておくと安心です。
保存期間は「電子だから一律○年」ではない
画像:国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」のPC表示。2026年10月15日撮影の画像を再使用。出典:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kojin_jigyo/index.htm
保存期間は、申告の種類や帳簿・書類の区分によって異なります。たとえば白色申告の法定帳簿は7年、請求書・領収書などの書類は5年と案内されています。青色申告でも原則7年ですが、書類によっては5年となるものがあります。[7][8]
消費税・インボイスに関する保存が必要な方は、その要件も別に確認してください。「全部5年で削除」と決める前に、自分の申告区分と書類の種類に合う保存期間を確認し、廃棄を判断できる状態にしておきましょう。
保存を続けるための月末チェックリスト
次の表は日常管理のための確認例です。法令の適用判定は、国税庁の保存要件チェックシートとあわせて行ってください。
確認すること | できている状態 | できていない場合の次の作業 |
受領・送付の両方を保存 | 必要な書類が保存先にある | メール・Webの未保存分を確認 |
データを開いて内容を確認 | 書類の全文・金額等が読める | 欠落や取得失敗を確認 |
保存ルールと実際の作業が一致 | 規程どおりの訂正・削除管理 | 運用と規程を見直す |
帳簿と書類を照合 | 記帳済み・未記帳を区別できる | 不足書類や入力漏れを調べる |
個人事業主の電子帳簿保存法でよくある質問
白色申告や免税事業者なら、電子保存しなくてもよいですか?
所得税等で帳簿書類の保存義務がある方は、電子取引データの保存を確認する必要があります。青色申告かどうか、インボイス登録をしているかだけで対象外とは判断できません。[1][3]
有料の会計ソフトを契約しなければ対応できませんか?
専用システムを導入しない方法も国税庁が案内しています。事務処理規程や保存環境を整えて運用する方法と、対応ソフトを利用する方法を、書類の件数や管理の負担で比べましょう。会計ソフトを契約するだけで、自分の保存方法が全て対応済みになるわけではありません。[2][4]
猶予措置があるなら、元データを残さなくてもよいですか?
猶予措置も元データの保存が前提です。要件に従えなかった相当の理由が認められることや、データと出力書面の提示・提出に対応できることなどの条件があります。適用に迷う場合は、国税庁資料を確認し、税務署等へ相談してください。[5]
まとめ|電子取引の保存先と運用ルールから整えよう
最初に行うのは、全ての紙を電子化することではなく、電子取引の保存漏れを減らすことです。メール・Webの受け取り先を確認し、データを残す場所を決め、改ざん防止・確認と出力・検索の条件を確かめましょう。
今日始めるなら、今月届いた請求書を1件選び、保存して開き直すところまで進めてみてください。そのあと、同じ方法を毎月続けられるようにルールを整えると、年末の書類探しも進めやすくなります。
参考にした公式情報
[5]国税庁:電子取引関係Q&A(令和8年7月、問4・6・20・26・45・93等)






